kenkino’s diary

おそらく技術・グッズ・自転車系 ※当ブログは、Amazonアソシエイトやその他アフィリエイト等の収益メディアを表示しております。

最近読んでた小説 ~星系出雲の兵站シリーズ~

引き続き、最近読んでた小説の感想。 今回は最近完結した日本のSF「星系出雲の兵站」シリーズについて書いていこうかと思う。

題名に「兵站」と書いてあるので後方の軍人達が前線に必要な物資を送り届けるために頭を悩ませる、という内容と思いきや兵站の話も結構あるが、ファーストコンタクトとコンタクトした相手の謎を解き明かしていくというのがほぼメインのシリーズである。

構成

構成としてファーストコンタクトとコンタクトした相手との戦闘がメインの第一部

コンタクトした相手とのコミュニケーションと母星系と思われる星系に進出しての調査がメインの第二部という構成になる。

「三体」と比べるとそれぞれの描写はアッサリしているが、宇宙での戦闘やコンタクトした生命体の考察の深さはこちらの方が深いと感じる構成になっている。

あらすじ

舞台は、何らかの理由で地球を脱出して植民可能な星系を見つけて定住してから数千年がたった人類社会。

植民後一時は蒸気機関を使うまでに文明が後退したが、小説の開始時点では超光速航行可能(しかし超光速航行を行うためには予め調査船を派遣して航行する空間の星間物質等の調査が必要になる)なまでに発展し、出雲と名付けた星系を中心に幾つかの星系に進出している。

あるとき辺境の壱岐星系で人類以外の技術で作られた人工衛星が発見されたことがキッカケとなり、壱岐星系の外縁部に人類以外の知的生命体が拠点を作っていることに気づいた人類と知的生命体の拠点を巡る攻防とそれに対する兵站の運用が第一部になる。

第二部は知的生命体が人類側とコンタクトを取り始めたため、交渉を行うためにコミュニケーションを開始すると同時に知的生命体の本拠地らしき星系を見つけた人類側は、問題の星系に調査拠点を築いて調査を開始するが様々な謎に遭遇する。

そして出雲星系と知的生命体の本拠地で人類の植民船の残骸を発見し、知的生命体と人類の植民船の驚愕の事実が明るみになるという展開である。

特徴

戦闘に関しては、拠点を巡る地上戦と双方の艦隊戦がメインだが、地上戦は歩兵支援用のモビルスーツのようなものが出てくる以外は普通に泥臭い地上での戦いである。

艦隊戦に関しては、銀英伝のような大艦隊同士でレーザー砲戦を交えるというよりかは、航空宇宙軍シリーズのように相手の機動を見越して爆雷を炸裂させてその効果範囲に突っ込ませる、というような渋い戦闘が展開される。

さらに冒頭であまり兵站に纏わる話はメインではないとは書いたが、相手の拠点を星系の資源分布から予想したり、重要な部分では相手の宇宙船が搭載可能な物資量から可能行動を見積もるなど、地味に兵站を意識した考察も用意されている。

このシリーズの特徴的なところとして、人類側が戦う相手があまりにも異質だということが挙げられる。

詳しくはネタバレになるので書かないが「三体」の三体星人がサトラレ体質である以外は結構人類に似た生態のように思われる記述であったのに対して、このシリーズの人類側の対戦相手は、通常考えられる知的生命体の生態とは大幅に異なる生態をしており、これまで色々なSFの知的生命体を読んできてはいたが、このシリーズを読んでいて「よくこういう生態の知的生命体を思いついたな」とこのような知的生命体を考察には改めて感心した。

加えて第二部から登場した相手の知的生命体とのコミュニケーション統括司令は、余りにもキャラが立ちすぎて、これまでそれなりに存在感のあった登場人物達が出ていたのだが、彼らの存在が霞んでしまうくらいの活躍してしまうのももウリなのではと感じた。

唯一惜しいなと思うのは、小説各所に散りばめられているネタである。

日本でもマニアックな人ならニヤリとするかなといったストライクゾーンの狭いネタなのだが、外国語に翻訳した際に意味がわからなくなることが請け合いで、まぁ日本国内で読むことを前提とした内容なので仕方がないが、生命体の考察等がかなり外国でもウケそうなのでそこは惜しいなと思った次第である。

全体的に軽く読めるシリーズではあるが、色々と展開が楽しめるので、ちょっと変わった異星人物とかを読んでみたいという方にはオススメできるシリーズである。