kenkino’s diary

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最近読んでた小説 ~三体シリーズ~

自分は年に10〜20冊くらいは小説は読んではいて、特に感想とかは書いてなかったが、ちょっと書きたいなと思って書いてみようと思う。

三体Ⅱ:暗黒森林

今回は「三体Ⅱ:暗黒森林」という作品、これは知ってる人もいるかと思うが中国の三部作のSF作品であり、著者はこの作品でSFの中で最も権威のある賞といわれるヒューゴ賞をアジア人で初受賞したという小説である。

去年第1部の日本語版が出版され、この作品はそれの続編となり、予定では来年に最終部である第三部出版される予定である。

あらすじ

あらすじとしては、第一部は文化大革命時代に親を文革派に殺されてしまったヒロインが、中国版SETIで地球外知的生命体(恒星が三つある恒星系に住んでいるため三体星人と呼ばれる)とコンタクトに成功。

過酷な環境の三体星人は地球の安定した環境に移住するために人類世界に絶望していたヒロインに手引きを要求、ヒロインは自分と似たような人類世界に絶望した人々と三体星人の侵攻に協力する組織を作り計画を進めていたが、それが露呈して組織は壊滅、だが既に三体星人の地球人監視&科学技術妨害システムが構築されてしまっていたという話だった。

今回の第二部は、三体星人は実は思考すると同時に思考したことが相手に伝達される、つまり三体星人全体がいわゆる「サトラレ」のようなものであるということと、侵攻部隊が世紀をまたいで地球に到達するという点を利用した地球人の防衛計画が国連で可決され、国連は防衛計画作成者を選出する、しかし地球の三体星人協力組織の残党が計画作成者の計画を暴く作戦が開始されて次々に計画が暴露されていく。

防衛計画作成者に選出された二部の主人公は、協力組織の残党が放ったウィルスにより治療法の発見と三体星人の侵攻部隊が来るまで人工冬眠させられ、侵攻部隊の先鋒が来る直前に人工冬眠から目覚めさせられる。

しかし三体星人の妨害にも関わらず大幅に科学技術が発展した地球側は必要性を見いだすことができなくなった主人公を防衛計画作成者から解任。 地球側は発展した科学技術で編成した大宇宙艦隊で三体星人を迎え撃つが地球側は呆気なく壊滅してしまう。

その後、主人公が冬眠前に予言したことが的中し、再び防衛計画作成者となった主人公は計画を推し進め、準備が全て整った後に監視システムを通じて防衛計画を三体星人に暴露、脅威を覚えた三体星人が撤退するというところで終了した。

見どころ

特徴としては、中国モノとして文化大革命を取り上げているというところが斬新で、第一部では人民裁判のシーンをこれでもかと書いていたりする。そのため日本語版では文化大革命のシーンは第1章なのだが、原作では第2章にして批判を和らげる配慮等をしていたらしい。

読んでいて思ったのが、端々に見られる中国の発展度合い、そして世界観や諸々が大仕掛けに感じられることである。

これは三体星人の協力組織に対する多国間会議や中国奥地で進められた設定の中国版SETIもそうなのだが、特に宇宙戦に顕著に表れていて、三体星人が送り込んだ探査体と対峙するにあたり500mクラスの1500隻近い宇宙艦隊が示威行動のために陣形を組んで出迎える -そしてそれらがほぼ一瞬で壊滅させられてしまう- 辺りはかなり大掛かりに感じた。まぁ宇宙戦については著者が銀河英雄伝のファンということ(第二部で銀英伝の登場人物のやりとりとかが引用されている)もあるのかもしれない。

加えて感じた点としては、他人の考えていることを疑うことを前提とした防衛計画や、それを前提とした心理戦、高度な知的生命体は攻撃的だという前提、三体星人の攻撃から生き残った艦隊内の疑心暗鬼を始めとした何か重苦しい展開で、最近のSFだとそういう展開の作品があるにはあるが、どこかしら救いがある部分のある作品が多いことを考えると、ちょっと変わっているなと感じる部分で、前に感じた大仕掛けな世界観と合わせてこの作品がウケた要因なのかなとも思った。

そして、その大仕掛けの世界と話の展開、そしてそれぞれの登場人物の絡みが上手くまとめられており、SFとしても読み応えがあるが、読み物としても中々よくできており、SF的な部分を端折って読んでも中々面白い作品だと思った。

来年出版される最終部は、かなり壮大な時間軸を扱うらしいのだが、チョロチョロとネタバレサイトを読んでみたところだと展開が谷甲州の航空宇宙軍シリーズ「終わりなき索敵」っぽい気が、しかしどの様にまとめてくるのか発売が楽しみである。

全体的に分量が多めだが、ちょっとガッツリした小説を読んでみたいというのであれば、これを読んでみるのがいいかと思う。